心身的には大きな問題はないのに,文章が書けなくなるという事態は一般に「スランプ」と呼ばれているが,どのようにしてそれを乗り越えればいいかが当事者にとっての喫緊の問題である.

書けなくなってしまった自分にとって手段を選ぶ精神的余裕はもはやない.場合によっては矢のような督促や加圧がやってくることもあるからからだ.それと同時に,締切まで逆算して遅れないようにこつこつ書き上げるというような“優等生的解決策”を個人的には拒否する.もちろんそれは悪いことではない.ぼく自身そのように書いてきたためしがないから実感がまるで湧かないというだけの理由だ.

溺れる者がつかまれそうな「藁」を思いつくままに挙げてみた:

1. アタマとシッポを先に —— つまり「タイトル」と「文献リスト」をつくってしまうというやり方だ.タイトルは課題でも何でもかまわない.そのタイトルのもとで連想される参考文献(引用文献である必要はない)のリストをどんどんつくってしまう.思いつくままに挙げていくだけなので,頭を使うことはない.ある程度リストが整備されたら,その土俵の中で何が議論できるかをイメージしてみる.思い浮かばなければ,タイトルを修正し,もう一回サイクルをまわす.最適値に近づいたときには書くべき文章が形をなしているはずだ.※過去,このやり方で窮地を乗り越えた経験が何度かある.
2. 人工降雪 —— 調子が出ないとき,何もないところから書き始めるのはなかなかつらい.過去に関連する文章を書いたことがあるならば,その文章をそっくりそのままペーストしてしまう(「そっくりそのまま」という機械的コピーがミソ).ペーストした文章を「核」にして,新しい文章をどんどん書き進めていく.最終的には「核」をそっくり置換してしまえばいい.※これも節単位あるいはトピックス単位でときどき使う手である.
3. パッチワーク —— まとまった文章でなくても,私信やMLへの投稿などちょっとした短文やパッセージを書いたとき,いつでも検索できるようにしておく.執筆が行き詰まったとき,それらをまとめてブラウズしてみると手がかりが見つかることがある.※自分が書いた文章が最大の味方になるということ.
4. 紙魚になる —— 関係しそうな本を書棚から出してずらっと並べてみる.あるいは過去の書評記事(自分が書いたもの)を眺めてみる.※読んでコメントをしたはずなのに忘れている本がいかに多いことか.
5. 逃避場所 —— 図書室の地下の片隅など誰も来ないような場所に避難してみる.あるいは逆に喫茶店で雑音や会話に身を任せてみる.※要するに「ワタシにかまわないで」という条件が満たされる場所ほどいい.

posted : Friday, July 3rd, 2009

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